会社設立

当事務所では、ある程度の成長を期待してビジネスをスタートさせるのであれば会社設立をお勧めしています。
今回のコラムは設立できる会社の種類や会社設立のメリットなどについてご紹介します。

私がご案内します!
丸山 貞ニ(行政書士)

会社設立か個人事業主か

当事務所の取扱業務である法人設立の中でも、もっとも多いのが会社設立です。商売を始めるときに、個人事業主か会社かという判断がまず必要になります。会社を設立するためには、それなりに費用もかかります。また、賃貸マンションに居住している場合などは、本店住所をおくための事務所なども必要になります。会計事務も複雑になります。そういった負担は少なくないので、まず個人事業主からまずはスタートするのも選択肢の一つです。しかしながら、ある程度の成長を期待してビジネスをスタートさせるのであれば会社設立をお勧めします。

会社設立のメリット

信頼

会社を設立する場合は、住所や代表者名、資本金の額、役員などを記述した必要書類を法務局へ提出し、登記しなければなりません。つまり、法人として社会に責任を持つことを表明したわけです。資本金の額でどれほどの覚悟で事業に臨んだのかがわかります。大手の法人と取引を行う時などには、重要なこととなってくるでしょう。また、許認可には法人でなければ許可されないものもあります。それもやはり信頼からくるものです。しかしながら、一方で会社組織にすることだけで信頼が得られるというものでもありません。例えば、会社組織にして、携帯電話だけを公表しているようなケースでは、組織で事業をしているという印象をお客様はもたないと思います。

融資・資金調達

個人事業主は、個人のお金と事業のお金が曖昧になりがちです。仮に、きちんと帳面をつけていたとしても、金融機関も、どの部分が事業資金か特定しずらいのです。法人の場合は、個人と帳簿が分かれているので、金融機関もその会社がどれくらい資産を持っているか決算書を見れば判断がつきます。つまり融資の判断がしやすくなります。個人事業主でも個人の信用で調達はできますが、一般的に法人の方が融資は容易と言われています。また、昔は、代表者が連帯保証人になることが当然でしたが、現在日本政策金融公庫などは代表者の連帯保証を求めなくなってきています。

決算月を自由に決められる

個人事業の事業年度は1月から12月までと決まっています。法人の場合は自由に事業年度の決算時期を設定でき、業務に合わせて忙しい時期と、決算事務をしなければならない時期をずらして選ぶことができます。

事業継承

個人事業主が死亡するとその瞬間に事業そのものが終了します。店舗などにかかっている経費はその瞬間から損金扱いされなくなります。事業承継がスムーズにいっても、無駄がでます。

節税

個人事業の場合の所得税は累進課税です。所得が増えれば税額が上がります。法人の場合は、800万円以下とそれ以上で法人税率は異なりますが、最大でも23%程度です。一方、個人事業主の場合の所得税率は、課税所得が900万円を越えると33%、最高税率は45%になります。役金が給料として受け取る額にも課税されるので、一概にはいえませんが、ある程度の規模からは節税効果もあります。

設立できる会社の種類

株式会社

出資者が株をもち株主になります。株主が会社のオーナーです。会社の社員と言ったら、従業員のことではなく、株主のことなので、覚えておいてください。株主総会で、誰を経営者にするかを決めますが、株主で経営者であるとは限りません。これを「所有と経営の分離」といいます。原則、株は自由に売買することができます。(実際には、小規模の会社では「譲渡制限」といって、会社の承諾がないと譲渡できないようにルールを決めることが多いです)

持分会社

持分会社とは、株式の発行などをせず、拠出した金額を持分として登記をします。所有と経営は分離していません。つまり出資者は経営者です。この出資、経営する人のことを「社員」と言います。社員は、無限に責任を負うのか、出資の範囲で責任を負うのかで無限責任社員と有限責任社員にわかれます。その責任の範囲で3つの企業形態があります。

合同会社

出資者は、出資の額の範囲で責任を負います。つまり有限責任社員です。

合名会社

出資者は全員無限責任です。

合資会社

有限責任社員と無限責任社員が混在します。

現在、合名会社、合資会社が設立されることはありません。無限責任の会社をわざわざ作ることのメリットはないからです。ただ、かつては企業が借り入れを行うときには、経営者が連帯保証人になることが前提でした。また、仕入れや、経費に代金も最終的には、経営者個人が返済することが当たり前だったので、個人事業の延長線上で合名会社はよく利用されていたのです。

従って、会社を設立するとき、株式会社か合同会社かで判断すれば良いということになります。時々、「有限会社は?」という問い合わせがありますが、現在は設立することができません。有限会社に代わるものが、合同会社と思っていただければ大丈夫です。それでは、株式会社と合同会社がどう違うのかをみていいきましょう。

株式会社と合同会社はどう違う?

最大の違いは、経営と所有が分離しているかどうかです。その違いから、さらに細かい違いが生まれます。しかしながら、現在では、株式会社でも、様々な制度設計が可能です。そのため、合同会社の良さが必ずしも有利にならないこともあります。また、大会社の場合と一人で会社を設立する場合とでは、同じ体制をつくっても意味がありません。それらを総合的に判断する必要があります。ここでは、比較的規模の小さな株式会社と合同会社を前提にして、比べてみたいと思います。

資本の調達方法が違う

株式会社は、株式を発行して株主から出資金を調達して、それを元手に事業を運営します。一方、合同会社は、社員自身が出資をし、その資金で事業を運営します。これが「所有と経営の分離」なのですが、株式会社でも、社長一人で出資をし、すべての株式を社長が持つということは普通にあることなので、その場合には同じ状況ではあります。しかしながら、将来出資を仰いで資金調達をするという場合には、これは大きな違いです。

意思決定のスピードが違う

株式会社では、大事なことは株主総会で決めます。例えば、定款(会社の法令集のようなものです)の内容を変更するには、株主総会を開いて決めます。定款には、本店の住所や会社の目的なども記載されていますから、本社の引っ越しをする、何か新しい事業をしようという時には、株主総会を開いて決めます。株主総会をひらくには招集手続きもありますし、定足数といって、最低出席者数の縛りもあります。つまり、役員である取締役だけで決めることはできないのです。その点、合同会社は実際に経営している社員が合意すればすぐに意思決定ができます。ただし、株式会社でも、株主が全員役員であることは多く、この場合にはそれほど大きな差にはなりません。

議決の考え方が違う

株式会社は、原則、所有する株式数によって議決権が決まります。過半数の株式を持っていれば、事実上完全支配下におけます。一方、合同会社の場合には、原則、持分には係わらず、一人一票の議決権を持ちます。原則と書いたのは、株式会社においては、議決権のない株式など、様々な種類の株式を発行できるようになり、また合同会社では定款の定めでこれらを変更できるからです。ただ、だからといって全く同じにはなりません。例えば、資金力が豊富な大手が資本金のほとんどを提供し、良いアイデアや技術をもっている個人と組むような場合。株式会社では、資本金の額によって決定権が決まりますが、合同会社の場合、このルールを排除しなければ、全員が同じ発言権をもつことができます。

収益の分配方法が違う

株式会社の場合、優先株式などもありますが、原則は、発行された株数に対して剰余金の分配は行われます。一方、合同会社の場合には、持分比率にかかわらず、定款で自由に定めることができます。先ほどの例のように、出資をする人、技術のある人がパートナーとなって設立するようなとき、出資の額に係わらず、利益を折半にするというような決め方もできるのです。

決算公告義務

公告(こうこく)とは、法律で決められた事柄を公に知らせることを言います。発音は広告と同じですが、宣伝のためなどに広く知らせる広告とは違って、こちらは法律上の義務です。株式会社の場合には、決算を公告することが義務づけられています。官報あるいは日刊新聞紙で行います。決算時期になると、日本経済新聞に決算公告が一斉に掲載されるのをごらんになった方も多いと思います。インターネット利用が普及したため、電子公告といって、ホームページでの公告も可能なりました。ただ、官報、日刊紙での公告は、要旨を記載すれば足りますが、電子公告では法令で定められた内容はすべて記載しなくてはなりません。家族経営であっても、オーナー一人の会社であっても、株式会社であれば、決算の公告義務はあります。官報にしても日刊紙にしても、費用がかかりますが、インターネットほ自前で行えますので、費用がかかりません。一方で、家族の収入状況が知られてしまうという可能性もあります。こういう規模であれば、合同会社も選択肢になります。

設立費用

合同会社の設立は、すべて自分で行えば、登録免許税の最低額6万円と会社の印鑑代くらいのものです。一方、株式会社を設立するためには、公証人役場で定款を認証してもらうという作業が加わります。この費用が、資本金によって3万円から5万円かかります。さらに、登録免許税の最低額は15万円です。10万円以上の開きがあります。また、定款認証がないため、設立のための時間も短くて済みます。ただ、設立費用の面だけを比較して、合同会社を選択するのはおすすめしません。まずは、どのような運営をしたいのかという点をしっかり考えることの方が重要です。

定款の書き換え

株式会社の取締役の任期はえ年、最長で10年です。つまり、10年に一度は定款を書き換える必要があり、その度に費用がかかりますが、合同会社の社員は人気がありませんので、このコストは必要ありません。

信用度合い

合同会社も株式会社も金融機関などからの信用は同じです。しかし、合同会社という名前になじみのない方は少なからずいます。当事務所で扱った案件でも、設立時から営業を雇う予定をしていたら、「合同会社では仕事が取りにくい」と言われたという理由で、株式会社を選択された方がいます。その方の印象だけかもしれませんが、業界によってはこういうこともあるようです。ただし、B to Cの事業の場合は、あまり考えなくても良いと思います。

会社設立に良くある質問

資本金はいくらくらいが良いのか

資本金はいくらくらいが良いか、決まりや目安はありますか?

株式会社、合同会社ともに、設立にあたり資本金の決まりはありません。

しかしながら、100万以下の資本金の場合、創業融資をうけるのは厳しいと考えた方がよいと思います。さらに、本来は事業計画に基づいて資本金を準備すべきです。また、最低資本金が定められている業種もあります。例えば、職業紹介の許可をとるときは、500万以上の資産が必要ですが、新設時には資本金で判断されます。

合同会社を株式会社に変更できる?

後から合同会社を株式会社へ変更することは出来ますか?

法律上はできます。しかしながら将来変更する可能性があるのであれば、株式会社を設立したほうが良いでしょう。

合同会社を株式会社に変更するときは、3ヶ月間の公告が義務づけられています。組織変更は大変な手続きです。

銀行口座の開設に有利なのはどちら?

株式会社と合同会社、銀行口座の開設をしやすいのはどちらですか?

銀行口座の開設については、どちらが有利ということはありません。

税金はどちらが得か?

株式会社と合同会社で税金がお得になるのはどちらですか?

税法上の有利不利はありません。

結局どちらが良いの?

当事務所では、まず株式会社の設立をお勧めします。

理由は、創業する会社の多くは、成長させようという夢をもって設立されるからです。成長の過程では、他人の資本も必要になります。大手の取引先が、株式を引き受けてくれるかもしれません。しかしながら、合同会社が悪いということではありません。最終的には、それぞれの事情を考慮して提案をするのですが、一般論として合同会社を設立することをおすすめする場合というのはあります。それでは、どのような場合に合同会社が向いているのでしょう

合同会社が向いている場合

出資比率に係わらず分配比率や議決権を決めたい

こういう事例があります。ある水産食品会社が出資をし、地元の加工品製造業者数社と会社を作り、加工品の製造を始めました。工場等の費用については、水産会社が、実際にノウハウを持っているのは加工品製造製造業者でした。株式会社ですと出資の額に基づいて、分配金も、議決権も決まってしまいますが、合同会社では自由に定款で定めることができます。こういうケースでは合同会社が向いています。

決算公告をしたくない

決算公告をすれば、多少なりとも財務内容は表にでます。小規模の家族経営の会社などは、家計が見えてしまうということにもなりかねません。こういうケースでは合同会社を選択することによって、財務内容を一切秘匿することができます。

個人事業主の延長

本来は、個人事業主として事業をしたいと考えているが、取引の関係上法人化をしなければならないといった場合は、合同会社を検討する余地はあります。ただし、将来的に、出資を仰ぎ、規模を拡大したいというような場合には、株式会社にしておいた方が無難です。

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